大腸がんは近年のがん死亡数の中で上位を占める病気で、女性では1位、男性では3位となり、40歳頃から罹患率(りかんりつ:がんだと診断される確率)が増加する傾向にあります。主に大腸がんの早期発見のために行う大腸カメラ検査について消化器内科専門医の橋本医師がわかりやすく説明します。
大腸カメラってどんな検査?
大腸カメラとは、正式には下部消化管内視鏡検査(かぶしょうかかん ないしきょうけんさ)といい、内視鏡検査の一種です。大腸の内側を観察するために、先端にカメラの付いた直径約1cmの細い管をお尻から挿入し、大腸がんや大腸ポリープ、炎症、出血の原因になる病気が大腸にないかを調べます。大腸の組織の一部を採取(生検)することや、大腸ポリープの治療も同時に行うことができます。
大腸カメラの対象となるのはどんな人?
下記のような方が大腸カメラ検査の対象となります。
保険診療で検査が受けられる場合
・便潜血反応検査(べんせんけつはんのうけんさ)で陽性となった方
・血便、下痢、便秘、腹痛、お腹が張る、便が細くなったなどのお腹の症状がある方
・過去に大腸がんや大腸ポリープの治療を受けたことがある方
・未治療の大腸ポリープがあり、経過観察されている方
※原則として、医師の診察により検査が必要と判断された場合となります。
自費診療となる場合
他の検査での異常や症状がなければ、保険適用外の自費診療となります。
・大腸がんや大腸ポリープになった人が家族にいる方
・その他、年齢的に大腸がんや大腸ポリープが心配な方
検査前には腸の中を空っぽにして、きれいにします
検査前の準備として、ご自宅で下剤(げざい:大腸に働きかけて、便を出すために飲む薬)を飲み、便を出し切って頂く必要があります。
検査前日の夜に少量の下剤、検査当日の朝には1~2Lの腸管洗浄液(ちょうかんせんじょうえき)という下剤をゆっくりと飲んで頂きます。個人差はありますが、当日朝の下剤を飲んだ後、おおよそ3時間程度で便が完全に排泄され、腸内は便のないきれいな状態になります。
検査前の食事について
食事は前日の夜まで食べられますが、腸に残りやすい野菜全般や海藻類などの食物繊維が豊富なものは控えて頂きます。
当日の検査時間は20分程度
当院では大腸カメラの検査は毎週木曜日と金曜日の午後に行っています。検査予約時間に来院して頂き、通常の観察のみの場合、検査時間は20分程度です。ただし肥満症、腸の長い方、お腹の手術歴があり腸に癒着がある方などの場合は検査時間が少し長くなることがあります。検査によるお腹の痛みや不快感には体質による個人差がありますが、極力痛みを感じさせないように工夫して検査を行います。
鎮静剤を使って検査を楽にすることもできます
少しでも楽に検査を受けたいという方には、うとうとしながら検査が受けられるように鎮静剤を使用することもできます。ただし、鎮静剤には呼吸抑制、血圧低下、ふらつきなどを起こす危険性もありますので、ご高齢の方や慢性的な呼吸器の病気などのある方には使用できないこともあります。
大腸がんは早期発見できれば、ほぼ100%治ります
大腸がんは進行すると様々なお腹の症状が出てきますが、早期がんや大腸ポリープの時点ではほとんどの場合症状がなく、なかなか気付くことができません。大腸カメラ検査の時に、大腸ポリープが見つかった場合はほとんどがその時点で治療することができ、ほぼ100%治すことができます。死因率の高い深刻な大腸がんを未然に防ぐために、大腸カメラ検査は非常に有効な検査といえます。
大腸がんになる大腸ポリープとはどんなもの?
ひとくくりで大腸ポリープといっても、がん化しやすいものからそうでもないものまで様々なものがあります。例えば大腸腺腫(だいちょうせんしゅ)や鋸歯状病変(きょしじょうびょうへん)などの将来的に大腸がんになる可能性のあるポリープが見つかった場合には治療を行います。
大腸カメラでの大腸ポリープ切除について
大腸ポリープの切除による痛みはほとんどなく、通常1個のポリープを見つけてから切除するまでは1~2分です。ただし、その場で治療しきれない大きなポリープや、大きながんがあった場合には、入院や特別な治療が必要になりますので、適切な総合病院をすぐにご紹介いたします。
大腸カメラの他に大腸がんや大腸ポリープを調べる検査はある?
便潜血反応検査(べんせんけつはんのうけんさ)、大腸CT検査、大腸カプセル内視鏡、注腸造影検査(ちゅうちょうぞうえいけんさ)、腫瘍マーカー(しゅようマーカー)などがあり、身体への負担が少ないなどのメリットもありますが、いずれも病変の検出率には限界があり、早期がんやポリープが見つかりにくいといったデメリットがあります。また、それらの検査で異常が見られた場合には精密検査として最終的に大腸カメラでの検査が必要となります。
大腸カメラの費用はいくら?
自費診療 | 27,500円(税込) ※鎮静剤使用時は別途料金が発生します |
保険診療 | ・検査のみ:5,000〜7,000円前後 ・検査+生検:20,000円前後 ・検査+ポリープ切除:20,000〜30,000円前後 |
※人間ドックや健康診断と同日の検査はできません。金額は2023年7月現在のものです。
チーム メディカル クリニックでの大腸カメラの特長
当院では極力見落としのない高精度な大腸カメラ検査を心がけ、大腸ポリープの発見率・切除率ともに60%以上の水準を保っています。これは症状のない10人の被検者様(当院では40〜50代が中心)に対して検査をし、6人以上からポリープが見つかっていることを意味します。また、30代の方からも当院では約3人に1人の割合でポリープが見つかっています。
その他には下半身が丸出しにならないような専用の穴あきズボンや、検査直前までお尻を隠せる長めの上着もご用意しております。
大腸カメラ検査は下剤による事前準備を含めると半日以上の時間がかかってしまい比較的ハードルの高い検査というのが一般的な印象ではないでしょうか。しかし、大腸がんの患者数は年々増加傾向にあり、40歳以上の約半数の方が大腸ポリープを持っているのが現実です。過去に一度も大腸カメラを受けたことがないという方はお気軽にご相談ください。
こんなお悩み・症状があればご相談ください
- 大腸カメラを受けたことがない
- 家族が大腸がんになっている
- 血便などの症状がある