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整形外科

頚椎症(けいついしょう)とは?レントゲン画像とMRI画像で首や肩の痛みの原因について整形外科医がわかりやすく解説

「手がしびれる」「細かい作業がしにくい」「なんとなく集中力が落ちる」…そんな症状の背後には、「頚椎症(けいついしょう)」という首の病気が潜んでいる可能性があります。このコラムでは、頚椎症について、整形外科専門医の鈴木医師に実際のレントゲン画像とMRI画像を使ってわかりやすく解説してもらいました。

頚椎症とは?

頚椎症とは、首の骨(頚椎:けいつい)やその周辺の組織が加齢や生活習慣により変形する疾患で、変形により神経を圧迫することで様々な症状が現れることもあります。圧迫される神経によって名前が異なり、

  • 脊髄が圧迫されると「頚椎症性脊髄症:けいついしょうせいせきずいしょう」
  • 神経の枝(神経根)が圧迫されると「頚椎症性神経根症:けいついしょうせいしんけいこんしょう」

と呼ばれます。

頚椎症の主な症状

頚椎症になると現れる主な症状は下記の通りです。

  • 首や肩の痛み、こり
  • 腕や手のしびれや筋力低下
  • 手先の細かい動作のしづらさ(キーボード・箸・ペンなど)
  • めまいがすることもあります

※肩こりや五十肩と症状が似ているため、身体所見や画像検査による正確な診断が大切です。

頚椎症の原因と生活習慣

頚椎症の主な原因は加齢ですが、次のような生活習慣も関係します。

  • 長時間の前傾姿勢(PC・スマホ作業)
  • 運動不足・血流不良
  • 精神的ストレスによる筋緊張

こうした負担の積み重ねが、首の構造に慢性的なダメージを与え、神経の圧迫へとつながります。

整形外科を受診すべきタイミングとは?

首や肩の痛みがあったり、仕事に集中できないなど、日常生活に支障を感じるような不調がある場合には、無理をせずお近くの整形外科にご相談ください。特に以下のような症状がある場合は、MRI検査による精密診断をおすすめします。

  • 首・肩の痛みが数週間以上続く
  • 腕や手のしびれ、力が入りにくい
  • 歩行が不安定、つまづきやすい
  • 原因がわからず、不安である

検査によって症状の原因を明確に把握することで、最適な治療方法の選択が可能となります。

頚椎症の検査と診断方法

診察ではまず、**症状の聞き取り(問診)**と、首や腕の動き・しびれの範囲の確認を行います。それに加え、下記の検査を行うことで、より正確な診断が可能になります。

  • レントゲン検査(X線):骨の並びや変形の有無を確認
  • MRI検査(磁場):神経や脊髄の圧迫を高精度で評価

MRI装置がある医療機関では、はじめから精密な診断が受けられます。

レントゲンとMRI検査はどっちも必要?

頚椎症の疑いがある場合は、まずはレントゲンを撮ることが多いです。レントゲンでは様々な角度から骨の形状がよく見えますので、レントゲンだけである程度の症状の予想がつきますし、診察においても十分な場合がございます。問診などで手や腕のしびれがある場合などは、レントゲンだけではわからない神経や軟骨までを確認するためにMRI検査で詳細を調べます。

頚椎症のレントゲン画像

こちらが頚椎症の実際のレントゲン画像なのですが、骨の形状が変化して出っぱっているのが確認できます。このように骨がぴょこんと出てくると、首の骨の後ろに通っている神経に骨が触ってしまって腕や手がびりびりしてしまうことがあります。

こちらは斜めから見ている画像ですが、他の部分に比べて黒い部分の形が異なり、骨の先端がぴょこんと出ているのがわかります。普通の正常な状態では、このような出っ張りはありません。

別のレントゲン画像を見てみましょう。本来首の骨はゆるやかに前に曲がっているのですが、こちらの画像では少し後ろに骨が曲がっているのが確認できます。こういうものも頚椎症で、このようにレントゲンでも多くの情報がわかります。

頚椎症のMRI画像

こちらは同じ方のMRI画像です。首の骨はレントゲンと同じように後ろに曲がっていることがMRIでも確認できます。また、背骨の間から少し膨らんでいるものが出ていて、神経に対して少しだけヘルニアっぽくなっているのも確認できます。背骨と背骨の間には繊維輪と髄核(ずいかく)から構成されている椎間板というクッション材があるのですが、これが少しだけ膨らんででてきています。このように、MRIでは骨が神経を圧迫しているかどうかや、ヘルニアがあるか、頚椎症による神経根症があるかどうかなどがわかります。

頚椎症の治療

レントゲンやMRI検査の画像で診断を行った上で下記のような治療を行います。

保存療法(まずはこちらから)

  • 薬物療法:消炎鎮痛薬、筋弛緩薬(きん しかんやく)、神経の痛みに効く薬
  • 装具療法:頚椎カラー
  • 注射療法:神経根ブロック、トリガーポイント注射

多くの患者様は薬物療法をはじめとする保存療法で、症状の改善が期待できます。

手術療法(重度の神経障害に対して)

以下のような症状がある場合は、手術を検討することになります。

  • 歩行障害(ふらつきや階段でのつまずき)
  • 手の筋力低下、細かい作業ができない
  • 排尿・排便のコントロールが難しくなってきた

頚椎症が治るとは?

今回ご紹介した画像では骨の変形が確認できましたが、実は薬を投与しても骨の出っ張りが元に戻ることはありません。ではどうして症状がよくなるのかというと、薬の効果や正しい姿勢を意識することにより、首や骨が正しい動きに戻り、症状が改善すると言われています。また、楽な姿勢を選ばずに正しい姿勢を心がけることで、首の筋肉に良い刺激を与えることも症状の改善につながります。

日常生活に支障がでないようにすることは可能

頚椎症による構造変化は自然に治ることはありません。痛みをゼロにすることは難しいかもしれませんが、症状を緩和させ、日常生活に支障が出ないようにすることは可能です。まずは整形外科を受診し、状態を判断してもらうのがよいでしょう。

この記事を監修した医師整形外科専門医 鈴木医師

このような方はご相談ください

  • 首や肩が慢性的に痛い
  • 首や肩のMRI検査を受けたい
  • 手や腕がしびれる