慢性疼痛とは
慢性疼痛の痛みは、「実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験」と定義されています。(IASP 国際疼痛学会2020年)
そして「慢性疼痛」とは「治療に要すると期待される期間を超えて持続する痛み」と定義され、一般的には3ヶ月以上続く痛みとされています。慢性疼痛では原因となる病気よりも「痛みそのもの」が問題となります。慢性的な痛みは、睡眠障害や意欲低下、就業困難など日常生活に悪影響を及ぼします。
統計
日本における慢性疼痛の有病率は全成人の22.5%(推計患者数は2,315万)に上り、痛みの部位は腰痛や肩が多くなっています。

痛みによるADLやQOLへの影響としては、仕事、学校生活、家事などの日常生活への支障、集中力の低下が多いです。

そして、「腰痛」「関節痛」「そのほかの痛み」のいずれにおいても、整形外科を受診していることがほとんどです。

診療の結果、医師に対する患者の満足度としては、80%程度の患者さんは不満であったと回答しました。この理由としては、薬物治療の第1選択薬はNSAIDsと呼ばれる消炎鎮痛剤なのですが、第2選択薬、第3選択薬として、欧米に比べ日本ではNSAIDs以外の鎮痛薬使用が少ないことも理由に挙げられます。

(図3、4、6、7)出典:『臨床整形外科』47巻2号, pp.127-134
急性疼痛と慢性疼痛の違い
急性疼痛は、生体への警告信号であり、多くは原因が明確で、通常は3ヶ月以内に改善するものです。一方で慢性疼痛は、痛みの原因が治癒した後も痛みが残る状態です。画像所見などで要因が確認できない場合もあり、予後が不明で、器質的要因に加えて心理社会的・精神医学的な要因が複雑に絡むことが多いです。
慢性疼痛の原因
慢性疼痛の中には、原因の特定が難しい場合もあります。疼痛の要因は「器質的要因(侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛といった、骨や関節変形障害、神経障害によるもの)」による疼痛や、「心理・社会的要因(ストレスなどによる)」などがありますが、慢性化している場合には、どれか一つに起因することは少なく、種々の要因が複雑に絡んだ状態のことが多いようです。痛みが長引くと、心理社会的要因との循環的相互作用により慢性化、重症化することが示されています。下記に痛みの恐怖回避モデルをご紹介いたします。

出典:厚労省「慢性疼痛ガイドライン」より引用
Leeuw M.et al : The fear-avoidance model of musculoskeletal pain : Current state of scientific evidence. J Behav Med 2007 ; 30 : 77-94 doi : 10.1007/s10865-006-9085-0. PMID : 17180640 より一部改編
慢性疼痛に対する治療法
治療では、痛みの「負のスパイラル」を断ち切ることが重要です。標準治療としては、薬物療法(内服薬、貼り薬)、神経ブロック注射、運動機能低下に対する理学療法、抑鬱状態に対するカウンセリングや薬物療法が選択されます。ほとんどは整形外科で行われていますが、麻酔科(疼痛専門)、リハビリテーション科、精神科が横断的・集学的に治療に関与します。しかし、慢性疼痛自体が難治性のため、治療効果に限界があることも多く、幹細胞治療などが現在注目され、期待されています。

この記事を監修した医師整形外科専門医 小橋医師
このような方はご相談ください
- 腰や肩が痛い
- 慢性的に体が痛い
- 体の痛みの原因が知りたい