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整形外科

肉離れの原因や治療、スポーツ復帰について解説

スポーツや運動の最中に、ふくらはぎや太ももに「ブチッ」と衝撃が走った——
それは肉離れかもしれません。
肉離れは、ダッシュやジャンプの瞬間に筋肉が切れてしまう、運動中のケガで最も多いもののひとつです。特に再発しやすいハムストリングでは、再発率が12〜63%という報告もあり、自己判断で復帰すると再発に苦しむ方が少なくありません。
この記事では、肉離れが起こりやすい部位や治療にかかる期間、受診の目安について、医学的根拠をもとにお答えします。
肉離れは正しく診断し、焦らず段階的に復帰することが、回復への近道です。

肉離れとはどんなケガか

肉離れとは、筋肉が強く引き伸ばされながら収縮したときに、筋線維などが部分的に切れてしまうケガです。
多くは全力疾走やジャンプ、ボールを蹴る動作など、大きな力を出す瞬間に起こります。この働き方を「伸張性収縮(エキセントリック収縮)」と呼びます。

太ももやふくらはぎの筋肉のケガには、いくつか種類があります。

  • こむら返り:筋肉が一時的に固まってロックした状態

  • 筋挫傷(きんざしょう):外から強くぶつけられて筋肉内で出血した状態

  • 肉離れ:自分の筋力に筋線維が負けて引き離された状態

同じ「筋肉の痛み」でも原因が違うため、まずは正しく見分けることが大切です。

太ももやふくらはぎの筋肉のケガの種類

肉離れが起こりやすい部位

肉離れは下半身の大きな筋肉に生じやすく、なかでも太もも裏のハムストリングが最も多く発生しやすい部位です。

全力疾走中などのように筋肉が伸ばされている状態の時に急激な収縮が生じることで、肉離れが生じます。

代表的な好発部位は、下記の3つです。

太もも前:大腿四頭筋の肉離れ

太ももの前側にある大腿四頭筋は、ボールを蹴ったときや、ジャンプして着地したときに起こりやすいケガです。
比較的軽症で済むことが多く、治療期間は2~4週間程度が目安です。

ふくらはぎ:腓腹筋の肉離れ(通称「テニスレッグ」)

ふくらはぎの肉離れは、テニスのサーブや、ダッシュからの切り返しなど、つま先で強く踏み込んだ瞬間に起こりやすいケガです。
「テニスレッグ」という呼び方でも知られています。

治療期間は3~6週間程度が目安ですが、筋肉の中の腱まで傷んでいる場合は、もう少し長くかかることがあります。

太もも裏:ハムストリングの肉離れ(最も多く、再発しやすい)

そして、肉離れのなかでもっとも多く、再発しやすいのがハムストリングです。

ハムストリングは、大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋という3つの筋肉をまとめた呼び方です。全力疾走中など、筋肉が伸びた状態のまま急に力を入れたときに起こります。

肉離れが起こりやすい部位
(画像はイメージです)

本記事では、このハムストリングを中心に、重症度の見分け方から復帰までの流れを詳しく見ていきます。

どんな症状が出るか・重症度の見分け方

肉離れの重症度は、筋肉を伸ばしたときの痛みの強さで、おおよその見当がつきます。
受傷した瞬間には「ブチッ」という断裂感や、蹴られたような衝撃を感じることが多いです。その後、患部の痛み・腫れ・押すと痛む圧痛が出て、重症では時間が経ってから皮下出血(青あざ)が現れます。

たとえば太もも裏のハムストリングを痛めた場合、膝をまっすぐ伸ばしたまま脚を持ち上げると強く痛むときは、重症の可能性が高いと考えられます。軽症なら軽い痛みで歩ける程度、中等症では歩行がつらくなります。

ただしこれはあくまで応急的な目安で、自己判断には限界があります。受傷直後はまず安静にし、無理に歩いたり走ったりしないようにしましょう。

肉離れの重症度の見分け方

放置は危険?病院に行くべきか

歩けても、肉離れは早めに受診したほうが安全です。

「歩けるから大丈夫」と自己判断するのは危険です。実際には筋線維が傷ついており、放置すると血腫(内出血のかたまり)が大きくなって腫れや痛みが長引くことがあります。
さらに、適切な時期を見極めずに復帰すると、再発を繰り返す原因になります。

肉離れは、いったん経験すると再発しやすいのが特徴です。
過去に肉離れをした人はしていない人に比べ、再発の危険が約2.7倍に高まると報告されています。再発の約3分の1は最初のケガから1年以内に起こり、初回より重くなることも少なくありません。

痛みが引いても組織の修復が追いついておらず、この段階で全力疾走すると再断裂しやすいことがわかっています。だからこそ、早い段階で整形外科を受診し、損傷の程度を正確に把握することが結果的に最短の回復につながります。
まずは受傷後できるだけ早く専門医に相談しましょう。

検査方法

肉離れの程度を正確に知るには、骨を写すレントゲンではなく、筋肉や腱を写せるMRIが適しています。

  • レントゲン(X線)

    剥離骨折や石灰化などを評価します。筋肉や腱といった柔らかい組織はほとんど写りません。

  • 超音波(エコー)

    その場ですぐに行える検査です。筋肉や腱の傷、内出血の有無をリアルタイムで観察でき、受傷直後の確認や、回復の経過を繰り返し診るのに適しています。ただし、深い部分や腱膜の細かい損傷を評価するには限界があります。

  • MRI

    筋肉・腱・内出血を鮮明に映し出せるため、肉離れの診断や、似た症状を起こす他の病気との区別に適しています。

特にMRIが役立つのは、筋肉の中を走る腱(腱膜)まで傷ついているかどうかの確認です。
腱の損傷があると回復に時間がかかり、見極めずに復帰すると再発しやすくなります。

肉離れの重症度を分ける分類

肉離れは、MRIで「どこが」「どの程度」損傷しているかを見ることで、重症度を客観的に評価できます。
ハムストリング損傷の代表的な分類が、奥脇分類・JISS分類です。

①奥脇分類:損傷部位による分類

まず、肉離れが起きた「場所」によって3つのタイプに分けます。

タイプⅠ: 筋線維部の損傷。通常では2週間以内に復帰可能です。
タイプⅡ: 筋腱移行部(特に腱膜部)の損傷。
6〜8週間以降にMRIで十分に修復していることを確認してからスプリント系のトレーニングを行います。
タイプⅢ: 坐骨などの筋腱付着部の損傷。アスリートでは2週間以内での手術も考慮。

②JISS分類:損傷の程度による分類

さらに、腱膜損傷の「程度」を3段階で表したものがJISS分類です。

1度: わずかな損傷で、腱膜の輪郭が保たれています。
2度: 部分断裂で、腱膜が部分的に断裂しています。
3度: 完全断裂で、腱膜がすべて断裂しています。

スポーツ復帰の時期やリハビリテーションの目安

ハムストリング損傷後の復帰の時期やリハビリテーションの目安を以下の表にまとめています。

奥脇分類 JISS分類 復帰までの目安 リハビリテーションの目安
タイプⅠ 通常2週以内 ・ストレッチ痛が消失したら、 段階的に強度を上げていく
タイプⅡ 1度 2週前後
2度 6週前後 ・ジョギングまではストレッチ痛などを確認しながら進めていく
・MRIで腱膜の修復を確認してから、スプリント許可
3度 10週前後
タイプⅢ 1度 ・まれな損傷であり、復帰時期について一定の見解はなし
・4〜8週程度を一つの目安としつつ、総合的に判断
2度 ・保存療法が中心
・手術が必要な場合は術後5カ月以降
・タイプⅡの2度、3度と同様
・競技選手の場合、手術を考慮
3度 ・保存療法可能な例は約4カ月以降
・手術の場合、術後4~6カ月以降

治療法

肉離れの治療は、保存療法が基本です。
受傷直後はPRICE処置で内出血と腫れを最小限に抑えます。

  • Protection(保護)  : 患部を保護し、悪化を防ぐ

  • Rest(安静)    : 運動を中止し、患部を休ませる

  • Ice(冷却) : 氷などで患部を冷やし、炎症や腫れを抑える

  • Compression(圧迫): 患部を適度に圧迫し、腫れを防ぐ

  • Elevation(挙上) : 患部を心臓より高い位置に保つ

その後は重症度に応じて、湿布・塗り薬・内服薬などで痛みをやわらげながら、痛みのない範囲で少しずつ動かしていきます。
肉離れの初期の痛みが落ち着いてきたら、MRIによる「タイプ」と「損傷度」に基づいて、段階的に運動レベルを上げていきます。
基本的な進め方として、自発痛が改善し、ストレッチ時の痛みや抵抗をかけた際の痛みが消えたら、まずジョギングから始め、徐々にランニングなどの軽い負荷のトレーニングへ移行します。
タイプⅡの2度3度の場合、必ずMRIで腱膜の修復を確認してから、スプリント(全力疾走)や強いキックを行います。

再発を防ぐために

再発を防ぐ最大のポイントは、痛みが消えても、組織が治りきるまで全力疾走を控えることです。痛みが引いても修復が追いついていないことは多く、自覚症状だけで「治った」と判断するのは難しいためです。特に腱膜を損傷したタイプでは、再発を繰り返すと復帰までに半年〜1年以上かかることもあります。再び痛めないために、次のような予防を続けましょう。

  • エキセントリック(伸張性収縮)トレーニング

    MRI等で回復を確認した後は、この動作を意識した負荷の低い運動をアップ等に取り入れることが、再発回避に有効です。

    (例)ノルディックハムストリングカール

    ノルディックハムストリングカールのイメージ

    1. 床に膝立ちになり、足首を固定します。
    2. 背すじをまっすぐ伸ばしたまま、体をゆっくりと前に倒していきます。
      太もも裏の筋肉でブレーキをかけるように、できるだけゆっくり耐えるのがポイントです。
    3. 限界まで倒れたら両手を床につき、体を支えながら元の姿勢に戻ります。
  • 隣接する筋肉の機能改善

    受傷した部位だけでなく、隣り合う筋肉や腱も含めて、機能をしっかり取り戻すことが大切です。

  • 柔軟性の向上と体幹の安定性

    日々のストレッチで関節の動く範囲を広げ、筋肉のしなやかさを保つこと、そして筋力を高めて体幹を安定させることが、肉離れ全般の予防につながります。

あせらず段階的に復帰し、痛みがぶり返したらすぐに専門家へ相談することが、再発予防の近道です。

再生医療(PRP療法)

保存療法で十分な改善が見られない場合などには、再生医療のPRP療法(多血小板血漿療法)が選択肢のひとつになります。

自分の血液から取り出した、組織の修復を助ける成長因子を多く含む成分(血小板)を患部に注射する治療法です。
ただし肉離れに対するPRP療法は、国際的には「復帰を早めたり再発を防いだりする効果は、現時点の研究では十分に確立していない」と評価されている点には注意が必要です。
「必ず治る」「確実に早く治る」というものではなく、効果には個人差があります。

よくある質問

肉離れは治るまでどのくらいかかりますか?

重症度と部位によって大きく異なります。軽症なら2週間ほど、腱を損傷した中等症では6〜8週ほど、付着部の重症例ではさらに長くかかります。MRIで損傷の程度を確認することで、より正確な復帰時期の見込みが立てられます。

歩けるのですが、病院に行く必要はありますか?

歩けても受診をおすすめします。軽く見えても腱の損傷が隠れていることがあり、放置や自己判断での早期復帰は再発の大きな原因になります。
早めにMRIで状態を確認しておくことが、結果的に最短の回復につながります。

肉離れが癖になってしまいました。どうすればよいですか?

繰り返す肉離れは、組織が治りきる前の復帰が原因のことが多いです。MRIで修復状態を確認し、段階的に負荷を上げることが再発予防の基本です。あわせてエキセントリック運動を続けると、再発予防に有効とされています。気になる方は医師にご相談ください。

PRP療法を受ければ手術せずに治せますか?

多くの肉離れはもともと保存療法で回復し、手術が必要になるのは付着部の重症例などに限られます。PRP療法は再生医療のひとつですが、肉離れに対する復帰短縮・再発予防の効果は国際的にまだ確立しておらず、効果には個人差があります。適応は損傷の状態を診たうえで医師が判断します。

まとめ

肉離れは、太もも裏のハムストリングを中心に、ふくらはぎや太もも前にも起こる身近なケガです。正しく診断し、焦らず段階的に復帰することが、再発させずに最短で治す最大のポイントになります。「歩けるから」と放置せず、また痛みが引いただけで全力疾走に戻らないことが何より大切です。当院では院内のMRIで損傷の程度を正確に見極め、保存療法から再生医療(PRP療法)まで、メリットと限界を正直にお伝えしながら、一人ひとりに合った治療をご提案します。太もも裏やふくらはぎの痛み、繰り返す肉離れにお悩みの方は、どうぞお早めにご相談ください。あなたが安心してスポーツや日常に戻れるよう、丁寧にサポートいたします。

ご相談はお気軽に

当院ではMRIによる精密検査・再生医療も対応しています。お気軽にご相談ください。

参考文献

  • 日本スポーツ整形外科学会 スポーツ損傷シリーズ5.肉離れ
    https://jsoa.or.jp/content/images/2023/05/s05.pdf
  • 仁賀定雄.ハムストリング肉離れ.Jpn J Rehabil Med 2019;56:778-783
  • Silvers-Granelli HJ, et al. Hamstring muscle injury in the athlete: state of the art. J ISAKOS 2021;6:170-181.
  • Hickey JT, Opar DA, Weiss LJ, Heiderscheit BC. Hamstring Strain Injury Rehabilitation. J Athl Train 2022;57(2):125-135.>
  • Hamilton B, et al. Platelet-rich plasma does not enhance return to play in hamstring injuries: a randomised controlled trial. Br J Sports Med 2015
  • Mayo Clinic. Muscle strains – Symptoms and causes.

この記事を監修した医師整形外科専門医 鈴木医師

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