歩くたびに股関節が痛む、長時間歩くとだるくなる、朝起きたときに股関節が動かしにくい——そんなお悩みを抱えていませんか。
そのような症状は、変形性股関節症のサインかもしれません。
変形性股関節症は多くが進行性の病気であり、放置すると徐々に歩行が困難になっていきます。
しかし、早期に診断・治療を開始することで、症状の進行を遅らせ、日常生活の質を維持することが可能です。
このコラムでは、変形性股関節症の原因・症状・検査・治療について、ガイドラインをもとに専門医がわかりやすく解説します。
変形性股関節症とは
変形性股関節症は、股関節の関節軟骨が変性・摩耗し、骨棘(とげのような骨の出っ張り)が形成される非炎症性の疾患です。
日本での症状を伴う変形性股関節症は0.75%ほど存在すると報告されています。
女性に多い疾患で、発症年齢は50歳代が最も多い傾向があります。

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一次性と二次性の違い
変形性股関節症には、原因が明らかでない一次性と、原因が特定できる二次性の2種類があります。
日本では二次性が圧倒的に多く、そのうち80%以上が寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)に起因しています。
特に幼少期に先天性股関節脱臼と診断されたことがある方は、将来的に変形性股関節症を発症するリスクが高いとされています。
変形性股関節症の原因・危険因子
この疾患の発症には複数の要因が関係しています。主な危険因子は以下のとおりです。
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寛骨臼形成不全:日本人では最も多い原因。骨盤の受け皿が浅く、股関節への負担が集中しやすい
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発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)の既往:幼少期の股関節疾患歴がある場合は注意が必要
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肥満:特に成人初期から体重が増えると股関節へのストレスが増大する
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重量物作業:日本・欧米ともに職業性の危険因子として報告されている
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cam型FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント):骨の形態異常による衝突が軟骨を傷めます。

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遺伝的な要因:様々な遺伝子が発症に関与することが報告されています。
症状
変形性股関節症の主な症状は股関節周りの痛みです。
鼠径部や殿部と訴えることが多いですが、大腿部や膝周囲に感じることもあります。
病気の初期には、長時間歩いた後のだるさや、歩き始めに感じる痛みが特徴的です。
病状が進むにつれて関節の動きが制限され、歩き方がおかしいと指摘されることもあります。
💡 ポイント
腰や膝の痛みと間違われることがあります。股関節由来の痛みか脊椎由来かを正確に判断するためには、専門医による診察と画像検査が不可欠です。
検査・診断
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単純X線(レントゲン)
診断の基本となる検査です。骨の変形や関節隙間の狭小化といった特徴的な所見を確認します。
様々な指標で寛骨臼形成不全の程度も評価します。 -
MRI(磁気共鳴画像)
レントゲンでは見えにくい軟骨や関節唇(かんせつしん)、骨のダメージなどを早期に発見できます。
当院ではMRIを院内に完備しているため、精密な画像診断が可能です。
特に「レントゲンでは異常なし」と言われたが痛みが続く場合は、MRIで原因を特定できることがあります。
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身体診察
関節の可動域(特に内外旋制限)、鼠径部の圧痛、歩行の状態などを確認します。
脊椎疾患との鑑別が重要であり、詳細な問診と診察を組み合わせて診断します。
股関節由来の症状を評価する検査法として「Patricktest(パトリックテスト)」や「Scarpa三角の圧痛」も有用です。・Patrick test
仰向けで片方の足首を反対側の膝の上に置き、膝を押し下げる検査です。股関節が屈曲・外転・外旋となるため頭文字をとってFABEREテストとも呼ばれます。
痛みが出現した場合を陽性と判定し、変形性股関節症、股関節唇損傷、仙腸関節障害などの可能性を疑います。
・Scarpa三角の圧痛
鼠径靭帯、縫工筋、長内転筋に囲まれた部位を「Scarpa三角(大腿三角)」と呼びます。関節に水が溜まっている状態でScarpa三角を押すと痛みを認めます。変形性股関節症や大腿骨頭壊死、股関節唇損傷などの指標となります。
治療法
変形性股関節症の治療は、まず保存療法から開始します。
病状が進行した場合や保存療法で改善しない場合は、手術療法を検討します。
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保存療法
ガイドラインでは、以下の保存療法が推奨されています。
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患者教育・生活指導
:体重管理、日常生活の動作指導など。
運動療法と組み合わせることで症状緩和が期待できます -
運動療法
:有酸素運動・筋力増強・水中運動が推奨されています。
特に股関節の外転筋群と膝関節の伸展筋群の両方を強化することが重要とされてます。1)

股関節の外転筋群(中殿筋など)

膝関節の伸展筋群(大腿四頭筋など) -
物理療法
:温熱療法・マニュアルセラピー・超音波療法などが有用とされています -
歩行補助具
:杖・歩行器・補高装具などが股関節への負荷を減らし、疼痛緩和に役立ちます -
内服薬
:アセトアミノフェン・NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)・SNRI(デュロキセチン)などが短期的な疼痛緩和と機能改善に用いられます。副作用(消化器症状・肝機能障害)に注意が必要です -
関節内注射
:ヒアルロン酸・ステロイドの注射が短期的な疼痛緩和に有効です。感染リスクを考慮し慎重に行います
⚠️ 注意
グルコサミン・コンドロイチンなどのサプリメントは、変形性股関節症に対する効果について一定の見解が得られておらず、ガイドラインでは推奨が示されていません。 -
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再生医療(PRP療法)
PRP(多血小板血漿)療法は、自己血液から血小板を濃縮した成分を関節内に注射する治療法です。
変形性股関節症に対するPRP療法については、ヒアルロン酸注射と同等の疼痛改善効果・安全性が示されている報告があります。
一方で、現時点では有用性を結論づけるに十分なエビデンスの蓄積が不十分であり、保険適用外の治療です。
当院では再生医療等安全性確保法に基づき提供しており、効果には個人差があります。 -
手術療法
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関節温存術(骨切り術)
:青壮年期(比較的若い世代)の前・初期変形性股関節症が主な対象です。 -
人工股関節全置換術(THA)
:進行期・末期や高齢の方が主な対象です。疼みの改善とQOLの向上が期待できます。
保存療法で改善が不十分な場合、それぞれの状態に応じて手術を検討します。
「関節温存術」や「人工股関節全置換」などの手術があります。
※当院では手術を行っておりませんので、手術をご希望の場合は他院へ紹介となります。
※手術名は1例ですので、必ずしも記載の手術を行うという事ではありません。どの手術が適しているかは、年齢・病期・骨の状態・生活スタイルによって異なります。
専門医と十分に相談しながら方針を決めることが大切です。 -
関節温存術(骨切り術)
まとめ
変形性股関節症は、早期に発見・対処することで症状の進行を抑え、日常生活の質を維持できる病気です。
「股関節が痛い」「歩き始めに違和感がある」「足の付け根が痛む」という方は、ぜひ一度専門医に相談することをお勧めします。
当院ではMRIによる精密画像診断を院内で行い、患者さんの状態に合わせた治療を提案します。
「まだ様子を見ていい?」「手術しかない?」といったご不安も含め、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 日本整形外科学会 変形性股関節症診療ガイドライン2023
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1)Bennell, K. L.et al. Effect of physical therapy on pain and function in
patients with hip osteoarthritis: a randomized clinical trial.JAMA 2014.

この記事を監修した医師整形外科専門医 鈴木医師
このような方はご相談ください
- 股関節が痛い方
- 股関節の動きが悪い方
- 股関節に違和感が続く方



