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整形外科

ジャンパー膝(膝蓋腱炎)の原因・症状・治療法を専門医が解説

「ジャンプするたびに膝の前側が痛い」「練習後に膝のお皿の下がずきずきする」——バスケットボールや陸上などのスポーツをされている方で、こうした悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。その痛みは、膝蓋腱炎(しつがいけんえん)、通称「ジャンパー膝」かもしれません。

放置してしまうと、練習どころか日常生活でも歩くたびに痛みが出るほど悪化することもあります。しかし、正しく診断して適切な治療を受ければ、多くのケースで改善が期待できる疾患です。
この記事では、膝蓋腱炎の原因から症状・検査・治療法まで、わかりやすくお伝えします。

膝蓋腱炎(ジャンパー膝)とはどんな病気か

膝蓋腱炎は、膝のお皿(膝蓋骨)の下から脛骨(すねの骨)に向かって走る「膝蓋腱」に過剰なストレスが繰り返しかかることで、腱に微細な損傷が生じる疾患です。
英語では「Jumper’s Knee(ジャンパーズニー)」とも呼ばれ、その名のとおり、ジャンプや着地を繰り返すスポーツに特に多く見られます。

炎症が起きているというよりも、腱組織が変性や傷ついた状態であることが多く、近年は「膝蓋腱症(patellar tendinopathy)」と表現されることも増えています。

膝蓋腱炎(ジャンパー膝)のイメージ図

どんな人に多い?

膝蓋腱炎はバレーボール、バスケットボール、走り幅跳び、走り高跳びなどジャンプ系スポーツを行うアスリートに非常に多い疾患です。
スポーツ選手だけでなく、成長期の中高生にも多く、特に男性・10〜30代に好発します。
一般の方でも、急に運動量が増えたときや硬い床でのトレーニングが続いたときに発症することがあります。

要因としては、大腿四頭筋やハムストリングスの柔軟性低下、足関節の背屈制限(足首が曲がりにくい状態)、トレーニング量の急増などが知られています。

💡 ポイント
ジャンプ系スポーツ(バレーボール・バスケットボール・陸上など)の選手に特に多いです。
特に成長期の男性アスリートは注意が必要です。

なぜ痛みが出るの?

膝蓋腱は、大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)が収縮する力を脛骨に伝える重要な組織です。ジャンプや急なダッシュ、キックといった動作ではこの腱に体重の数倍もの力がかかります。

膝蓋腱炎は、こうした負荷が繰り返されることで、腱の線維に微細な断裂が積み重なり、腱が変性することで生じます。
炎症が主体というよりも、「腱そのものの構造が傷んでいる状態」と理解するとわかりやすいでしょう。

どんな症状が出る?

最も典型的な症状は、膝蓋骨(お皿)の下端部分の痛みです。
特に以下の症状が生じます。

  • 膝のお皿の下を指で押すと痛い

  • 長時間座った後に立ち上がると膝が痛い

  • ジャンプや着地・階段の上り下りで痛みが出る

最初はスポーツ後にだけ痛みを感じる程度ですが、進行すると運動中も痛くなり、さらに悪化すると日常生活での歩行時にも痛みが出るようになります。

痛みの程度は、スポーツ整形外科の分類(Blazina分類)で4段階に整理されており、ステージが上がるほど競技への影響が大きくなります。

Blazina分類1)
グレード 症状
I スポーツ活動中の痛み
スポーツ開始時に痛みが出現し、ウォーミングアップ後に消失
ただし疲労が始まると再発する痛み
活動中および活動後の痛みで、スポーツへの参加が不可能な状態
完全な腱断裂

「まだ運動できるから大丈夫」と放置すると腱の断裂につながることもあるため、早めの受診が大切です。

どうやって診断する?検査方法

  • 問診・触診

    まず、どんな動作で痛みが出るか、いつから痛むか、スポーツ歴などを丁寧に確認します。
    膝蓋骨の下端(膝蓋腱の付着部)を押したときに強い圧痛があれば、膝蓋腱炎を強く疑います。

  • レントゲン(X線)検査

    腱そのものはX線には映りませんが、石灰沈着や骨の変化を確認するために撮影します。
    膝蓋腱炎の診断よりも、骨折など他の疾患との鑑別が目的です。

  • MRI検査

    膝蓋腱炎の診断で、最も詳しい情報が得られる検査です。
    腱が厚くなっていないか、部分的に切れていないかなど、腱の状態を直接確認できます。「レントゲンでは異常なし」と言われた方でも、MRIを撮ることで原因がはっきりわかることがあります。重症度の判断や、治療の方針を決めるうえでも重要な検査です。

    膝蓋腱炎(ジャンパー膝)のMRI画像

  • 超音波(エコー) 検査

    腱の形態変化をリアルタイムで確認できる検査です。
    放射線被曝がなく、動的な評価もできるため、スポーツ医学の現場でよく使われます。

💡 知っておきたいポイント
膝蓋腱の厚さが7mm以上あると、膝蓋腱炎になりやすい傾向があることがわかっています。

治療法:保存療法から再生医療まで

  • 保存療法

    症状が軽〜中等度の場合は、まず保存療法が中心となります。
    過負荷の原因となっているトレーニング量の調整や内服、リハビリテーション、装具療法、注射などを組み合わせて治療を行います。

  • -消炎鎮痛薬(NSAIDs)や装具療法

    運動後のアイシングや消炎鎮痛薬(NSAIDs)による痛みのコントロール、テーピング・膝蓋腱サポーターの使用も有効とされています。

    ※ステロイド注射には腱の強度の低下、腱の断裂など重大な副作用があるため、現在では避けられています。

  • -運動療法

    筋肉をゆっくり伸ばしながら力を入れる「スロースクワット」のような運動(遠心性トレーニング)が効果的です。
    筋肉を縮めながら行う運動(求心性トレーニング)よりも、伸ばしながら行う運動のほうが症状の改善につながりやすいことが報告されています2)。

    また、関節を動かさずに筋肉だけに力を入れる運動(等尺性トレーニング)も、痛みが強い時期に取り入れやすい方法です。

    • 遠心性トレーニング(筋肉を伸ばしながら力を入れる運動)

      スロースクワット:ゆっくりと時間をかけてしゃがみ込むことで、太ももの筋肉を伸ばしながら鍛えます。

      スロースクワットトレーニングのやり方

      デクラインスクワット:傾斜のある台の上でスクワットを行います。膝への負荷が高まり、より効果的に筋肉を刺激できます。

      デクラインスクワットトレーニングのやり方

    • 等尺性トレーニング

      クアドセッティング:膝裏に枕を置き、押しつぶすように膝を伸ばします。太ももの前側に力が入ることを意識しましょう。

      クアドセッティングトレーニングのやり方

  • -体外衝撃波療法(ESWT):自費診療

    音波のエネルギーを患部に照射することで腱組織の修復を促す治療法です。
    効果を示す報告はあるものの、現時点では医療現場での統一した見解には至っていません。内服薬やリハビリといった保存的な治療で十分な改善が得られない場合に、次の選択肢として検討されます。

  • -PRP療法(多血小板血漿療法):自費診療

    自身の血液から成長因子を濃縮したものを患部に注入することで、腱の修復・再生を促す治療法です。超音波ガイド下で行うことで、患部への正確な投与が可能になります。

    保存療法で改善が不十分な慢性的な膝蓋腱障害に対して有効な選択肢とされており、手術よりも侵襲性が低いことから、手術前に検討すべき治療として位置づけられています3)。

    注射回数については、複数回が推奨されることが多いものの、1回の注射でも短〜中期的に十分な効果が得られるという報告もあり、現時点では統一した見解はありません。
    体外衝撃波療法(ESWT)との比較では、6ヶ月以降の経過においてPRP注射のほうが良好な結果を示した研究もあります3)。

    ただし、PRP製剤の調製方法や投与回数によって効果に差があり、現時点では治療効果に個人差があることが知られています。
    当院では再生医療等安全性確保法に基づき、PRP療法を提供しています。

  • 手術療法

    3〜6ヶ月以上の保存療法でも改善が見られない場合に検討されます。
    変性した腱組織を切除・デブリードマン(傷んだ組織を切除する外科的処置)する方法などがあります。

💡 ポイント まずは保存療法が基本。
改善しない場合は体外衝撃波療法やPRP療法、手術など、段階的に治療を検討します。

まとめ

膝蓋腱炎(ジャンパー膝)は、ジャンプ動作を繰り返すスポーツ選手に多い慢性的な腱の傷みです。「少し痛いけど動ける」という段階でも、放置すると腱の断裂や長期離脱につながるリスクがあります。早めに受診して正確な診断を受けることが、早期回復への近道です。
当院はMRIを院内に完備しており、腱の状態を詳しく評価したうえで、保存療法・PRP療法(再生医療)など一人ひとりに合った治療をご提案しています。「膝の前側の痛みが続いている」「スポーツに復帰したい」とお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

参考文献

  • Mabrouk et al. Patellar Tendinopathy. In: StatPearls [Internet]. T: StatPearls Publishing; 2024 Jan.
    Available from:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK532969/
  • 1)Blazina ME, Kerlan RK, Jobe FW, Carter VS, Carlson GJ. Jumper’s knee.Orthop Clin North Am. 1973;4(3):665-78
  • 2)Jonsson P, Alfredson H. Superior results with eccentric compared to concentric quadriceps training in patients with jumper’s knee: a prospective randomised study. Br J Sports Med. 2005 Nov;39(11):847-50
  • 3)Andreas Theodorou et al.Patellar tendinopathy: an overview of prevalence,risk factors, screening, diagnosis, treatment and prevention.Arch Orthop Trauma Surg. 2023 Aug 4;143(11):6695–6705

この記事を監修した医師整形外科専門医 鈴木医師

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