胃カメラとバリウム検査はどっちを選ぶのが正解?メリット、デメリットも踏まえて消化器内科の医師が解説

健康診断などでよく耳にする胃カメラとバリウム検査。同じ消化器内科の検査ですが、どちらを選ぶ方が良いのでしょうか?当院で両方の検査の診断を行なっている消化器内科の志摩医師に聞いてみました。

結論は胃カメラがおすすめ

結論をはじめにお伝えすると胃カメラがおすすめです。胃カメラはバリウム検査に比べると検査で得られる情報量が圧倒的に多いためです。バリウム検査では、レントゲンを連続的に照射しながら撮影し、上記写真のように消化管の形状や凹凸を白黒のレントゲン写真を元に診断をします。

それに対して胃カメラは食道や胃の中に直接カメラを挿入して確認しますので、書籍の写真にあるように、白黒の写真ではわからない消化管内の状態を実際に確認して診断することができます。観察する範囲はバリウム検査も胃カメラも食道から十二指腸の一部で差はありませんが、病変の指摘や診断においては胃カメラの方が優れています。

バリウム検査(胃透視検査)について

健康診断などで標準となっていることの多いバリウム検査(胃透視検査)ですが、バリウムとは、X線を通しにくい性質の重晶石という白い石を水に溶かした薬です。検査の前に2種類の液体を飲むのですが、一つ目が造影剤であるバリウム、もうひとつは胃の中を膨らませるために飲む発泡剤です。検査台の上で体勢を変えながらバリウムを胃の中で薄く広げて、胃の形や表面の凹凸をレントゲンで撮影します。

バリウム検査のメリット

カメラを体内に挿入するわけではないため、胃カメラを飲み込んだ時に感じる吐き戻すような不快感や苦痛がないことでしょうか。また、バリウム検査はバスによる巡回検診も可能で、検査時間が短く手軽にできることもメリットとして挙げられます。検査費用も胃カメラより5,000円程度安いことが一般的です。

バリウム検査のデメリット

胃カメラと比較した場合に得られる情報量が限られていることや、少量ではあるものの放射線被曝があることが挙げられます。また、バリウム検査で異常が指摘された場合に、その詳細を確認するためには改めて胃カメラ検査を実施する必要があります。

バリウム検査で注意したい腸閉塞

バリウムは体内に吸収されないので、検査後にバリウムを完全に体外に排出させるために強い下剤を飲む必要があります。まれに、バリウムが原因で腸閉塞になってしまうことがあります。さらに穿孔(せんこう)や腹膜炎(ふくまくえん)を併発し、重篤(じゅうとく)になる場合もあります。過去に消化管の手術歴がある方や大腸憩室(だいちょうけいしつ)の指摘をされたことのある方は合併症を起こす可能性があるため、バリウム検査は避けていただくか、主治医の許可を得て検査を受けていただくことをおすすめします。バリウム検査にはこのような注意点があることも認識しつつ、検査後にはバリウムを確実に体外に出すようにしてください。

胃カメラ(内視鏡検査)について

胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)は先端に小型カメラのついたチューブを体内に挿入し、内部の様子をリアルタイムで直接観察することができます。カメラの挿入方法は口から挿入する場合と鼻から挿入する場合があります。鼻から挿入する経鼻内視鏡(けいびないしきょう)の方がチューブの径が細いので、比較的楽に検査を受けられます。

胃カメラのメリット

食道や胃などの消化管内の色の変化やわずかな隆起や凹み、模様の変化、小さな病変や平坦な病変など、バリウム検査では分かりづらい消化管内部の所見を鮮明な画像で直接観察することができます。特に早期の胃がんにおいては病変が小さく、わずかな凹凸、色調の違いとしてしか認識できないことが多いため、このような病変の指摘にはバリウム検査よりも胃カメラの方が断然優れています。また胃がんや胃潰瘍、十二指腸潰瘍のリスクになるピロリ菌感染の有無についてもバリウム検査よりも胃カメラの方がより正確に評価することができます。

検査と同時に組織検査もできる胃カメラ

胃カメラの検査中に、がんなどの悪性の疑いのある病変が見つかった場合には、“生検”(せいけん)といって病変の一部を採取し顕微鏡で詳細に調べ、がんかどうかの確定診断をつけることも可能です。

胃カメラのデメリット

カメラを口や鼻から挿入する際の不快感が挙げられます。特に口から挿入する胃カメラは不快感や咽頭反射(いんとうはんしゃ:のどの奥に指を突っ込むと「オエっ」となる状態)が強く出る場合があります。鼻から挿入する経鼻内視鏡の方が咽頭反射が出づらいため、苦痛の軽減が期待できます。他にもカメラの挿入による粘膜の損傷や出血、穿孔などの可能性もあり、鼻からの挿入の場合は鼻出血がみられることもあります。どうしても胃カメラの不快感が不安な場合は、事前に申し込んで頂くことで鎮静剤を注射し、眠っている、あるいはぼんやりした状態で楽に検査を受けて頂くこともできます。

40歳を過ぎていたら一度は胃カメラを

胃カメラもバリウム検査もいずれも食道、胃、十二指腸の検査として、観察を行う範囲は同じですが診断できる内容には大きな違いがあることを説明させて頂きました。40歳頃からがんを発症する方が増え始めます。特に自覚症状がない方でも40歳以降の方は年に一度の定期的な胃カメラ検査をおすすめします。

この記事を監修した医師消化器内科 志摩医師

このような方はご相談ください

  • 胃カメラがはじめて
  • 健康診断が近い
  • 40歳を過ぎている